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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)4710号 判決

原告 日本相互銀行

理由

(証拠)を総合すると、相互銀行である原告は、洋服布地の製造販売を業とする被告商事に対し、昭和三〇年四月当時五、七〇〇万円余の貸金債権を有していたところ、右債権整理の方法として同月四日買戻約款付で同被告の殆んど唯一の資産である本件建物を代金三五〇〇万円で買受け、その代金債務と前記債権とを対当額において相殺し、その買戻し期間中同被告に対し本件建物を賃貸することとした、との事実が認められる。右事実によれば右建物売買は単なる営業用財産の譲渡にとどまり組織的一体をなす機能的財産たる営業又はその重要な一部の譲渡を目的とするものではなく、従つて右売買契約の締結は被告商事の代表取締役の通常の権限の範囲内の行為と見られ、株主総会の特別決議を要するものではない。従つて原告は右売買により適法に本件建物所有権を取得したと認められる。

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